今回は、ソーシャルワーカー(社会福祉士)の仕事「市町村社会福祉協議会」に焦点を当てて説明します。
この記事を読むと
- 市町村社会福祉協議会の役割について理解できる
- 市町村社会福祉協議会の仕事内容について理解できる
- 市町村社会福祉協議会の対象者について理解できる
市町村社会福祉協議会とは
市町村社会福祉協議会の役割
役割は5つに大別することができます。
- 住民参加による地域福祉活動、地域づくりの推進
- 相談支援、権利擁護
- 介護・生活支援サービス
- ボランティア・市民活動センター
- 災害対応、被災地・被災者支援
とっても幅広く活動していることがわかります。
どれもこれも重要業務なのですが、最近特に注目されているのは、災害に関する支援活動です。というのも最近は自然災害が多いと思いませんか?
2024年1月の能登半島地震といい、大規模な災害が多いですよね。
ですので、より速やかで効率的な支援活動が市町村社会福祉協議会にもとめられています。
どれもこれも大事だけど個人的には災害支援が重要
市町村社会福祉協議会の歴史
社協の起源は、戦前の民間福祉団体に遡ります。大正時代から昭和初期にかけて、地域の福祉問題に取り組むための民間団体が設立され始めました。これらの団体は、貧困救済や児童福祉、衛生改善などを目的として活動していました。
第二次世界大戦後、日本は社会福祉制度の再編成を迫られました。1946年、厚生省(現:厚生労働省)は地域福祉の推進を図るため「社会福祉協議会」を設置するよう指導しました。これにより、戦後の混乱期において地域福祉の重要性が再認識されました。
1951年に「社会福祉事業法」(現:社会福祉法)が制定され、社協は法的に位置付けられました。この法律により、社協は地域の社会福祉を推進するための中核的な組織として明確に規定されました。
1970年代から1980年代にかけて、社協は地域福祉計画の策定と実施に重点を置きました。各市町村において、地域の福祉ニーズを把握し、具体的な支援策を講じるための計画が策定されました。これにより、地域ごとの特色を活かした福祉活動が展開されるようになりました。
1990年代に入ると、日本は急速に高齢化社会を迎えました。これに伴い、社協は高齢者福祉の充実に力を入れ、地域包括支援センターの設置や介護サービスの提供を進めることにしたのです。
今ではあたりまえですが、先駆的ですよね!
高齢者が安心して暮らせる地域づくりが求められ、社協の役割はますます重要になりました。
1995年の阪神・淡路大震災以降、社協は災害時の支援活動にも積極的に取り組むようになりました。災害時における避難所運営や被災者支援のためのボランティアの調整など、地域の災害対応力を強化する活動が行われています。これにより、災害時の地域連携が一層強化されました。
2010年代以降、社協は地域共生社会の実現を目指し、多様な主体(住民、企業、行政など)との連携を強化しています。地域の課題を解決するための包括的な支援体制を構築し、誰もが安心して暮らせる社会の実現を目指しています。
社会福祉協議会は時代のニーズにあわせて柔軟に活動を変化させています
市町村社会福祉協議会 根拠法・法制化
市町村社会福祉協議会の設置規定
市町村社会福祉協議会は、1983年の社会福祉事業法の改正により法制化されました。これにより、全国の市区町村に社会福祉協議会が設置されることになったのです。
具体的には、社会福祉法第109条で市町村社会福祉協議会の設置が規定されています。この法律では、市区町村に1つに限り社会福祉協議会を設置することが定められています。
そうなんです。きちんと法的に位置づけられている機関なんです。
また、政令市の地区協議会に関する規定も追加されました。これにより、大きな市区町村では、地区ごとに社会福祉協議会を設置することができるようになったのです。
これらの法的な位置づけにより、市町村社会福祉協議会は地域福祉の推進を図る中心的な役割を担うことになりました。全国の市区町村に設置されることで、地域に密着した活動を展開することができるようになったのです。
市町村社会福祉協議会の財源
社協の主な財源の一つは、自治体からの補助金や委託費です。各市町村の自治体は、地域福祉の推進において重要な役割を果たしているため、社協に対して様々な補助金や委託費を提供しています。
次に、社協は国からの補助金も受けています。厚生労働省などの国の機関は、地域福祉の向上を図るために社協に対して補助金を交付しています。これらの補助金は、特定の事業やプロジェクトに対して提供されることが多く、例えば災害時の支援活動や地域福祉計画の策定・実施に使われることがあります。
また、社協の財源には、寄付金や募金も重要な役割を果たしています。地域住民や企業からの寄付金や募金は、社協の活動を支える大きな力となっています。これらの寄付金や募金は、地域の福祉活動やボランティア活動の資金として活用されます。特に、地域の住民が自発的に行う募金活動や企業のCSR(企業の社会的責任)活動としての寄付は、地域社会全体の福祉意識を高める効果もあります。
さらに、社協は会費も収入源の一つとしています。社協には、地域の住民や企業、団体が会員として参加することができ、会員からの会費が財源の一部となります。会費は、社協の運営費や活動費として活用され、地域福祉の推進に役立てられます。会員になることで、地域の福祉活動に直接的に貢献できるというメリットもあります。
加えて、社協は自らの事業収益も財源として活用しています。例えば、バザーやチャリティイベントの開催、福祉用具の貸出事業、介護サービスの提供など、社協が独自に行う事業から得られる収益も重要な財源となっています。
地域活動をしている方は社会福祉協議会が実施しているバザーに参加したことがあるかもしれませんね。
このように、市町村社会福祉協議会の財源は多岐にわたる収入源から成り立っています。自治体や国からの補助金・委託費、寄付金や募金、会費、事業収益、そして助成金や補助金の申請など、多様な財源を組み合わせることで、社協は地域福祉の推進と支援を実現しています。これからも、社協は地域の福祉ニーズに応えるために、様々な財源を確保しながら活動を続けていくことでしょう。
市町村社会福祉協議会の事業内容
市町村社会福祉協議会の具体的な仕事内容
市町村社会福祉協議会、通称「社協(しゃきょう)」は、地域社会における福祉の推進を目的とした組織であり、地域住民の福祉ニーズに応じた多岐にわたる活動を行っています。以下に、その具体的な仕事内容をいくつか挙げてみますね。
まず、地域福祉計画の策定と推進があります。これは、地域の福祉ニーズを把握し、住民や関係機関と協力して福祉サービスの提供体制を整備するための計画を立てることです。この計画は、地域の特性や課題に応じた具体的な施策を盛り込み、住民の生活の質を向上させるためのものです。
次に、ボランティア活動の推進と支援です。社協は、ボランティア活動の普及啓発やコーディネートを行い、地域住民が気軽に参加できるような環境を整えています。例えば、高齢者の見守り活動や子どもたちの学習支援など、地域の課題解決に向けたさまざまなボランティア活動を支援しています。
さらに、高齢者や障害者、子育て家庭など、さまざまな福祉サービスの提供や相談支援を行っています。例えば、高齢者には介護サービスの紹介やデイサービスの運営、障害者には就労支援や生活支援、子育て家庭には育児相談や子育てサロンの運営などが挙げられます。これらのサービスは、地域住民が安心して生活できるようにするための重要な役割を果たしています。
また、災害時の福祉活動も社協の重要な役割の一つです。災害発生時には、避難所の運営支援や被災者への支援活動を行い、地域の復興に向けた取り組みをサポートします。平常時から防災訓練や防災教育を実施し、地域住民の防災意識を高める活動も行っています。
他にも、地域住民の交流を促進するためのイベントや講座の開催、福祉に関する情報提供や啓発活動なども行っています。これらの活動を通じて、地域のつながりを深め、住民同士が支え合うコミュニティを築くことを目指しています。
都道府県社会福祉協議会と市町村社福祉協議会の違い
似ているようで似ていないのが都道府県社会福祉協議会と市町村社会福祉協議会です。
例えば都道府県社会社会福祉協議会は、
- 広域的な調整:都道府県内の市町村社協や福祉団体との連携を強化し、広域的な福祉政策の調整
- 研修・支援:市町村社協の職員やボランティアに対して研修や支援を行い、地域福祉活動の質を向上
- 情報提供・調査研究:地域福祉に関する情報提供や調査研究を行い、各市町村社協の活動をサポート
となっています。
イメージとしては、市町村社会福祉協議会は実際にクライエントにかかわる。
都道府県社会福祉協議会は後方支援といったところでしょうか。
市町村社会福祉協議会と都道府県社会福祉協議会はどちらが上という関係ではないので注意!
市町村社会福祉協議会についてまとめると
市町村社会福祉協議会(社協)の役割は大きく5つに分けられます。まず、住民参加による地域福祉活動と地域づくりの推進があります。住民が主体となり、地域の福祉ニーズに応じた活動を展開します。次に、相談支援や権利擁護を行い、生活困窮者や高齢者、障害者などの支援を実施します。介護・生活支援サービスも重要で、デイサービスや介護サービスの提供などが含まれます。ボランティア・市民活動センターの運営も行い、地域のボランティア活動を支援・調整します。特に注目されるのが災害対応で、自然災害が頻発する中、迅速で効率的な被災地・被災者支援が求められています。社協の起源は戦前の民間福祉団体に遡り、1951年の「社会福祉事業法」制定以降、地域福祉の推進を中核とする組織として発展してきました。財源は自治体や国からの補助金、寄付金、会費、事業収益など多岐に渡り、地域に密着した活動が可能です。
まとめ
- 事業内容は、住民参加による地域福祉活動と地域づくりの推進、相談支援と権利擁護、介護・生活支援サービスの提供、ボランティア・市民活動センターの運営、災害対応と被災地・被災者支援
- 近年は災害支援に注力
- 1951年に「社会福祉事業法」制定による法的地位の確立
- 2010年代以降、地域共生社会の実現を目指す
- 財源は、自治体からの補助金や委託費、国からの補助金、寄付金や募金、会員からの会費、自らの事業収益