今回は、ソーシャルワークにおける課題中心アプローチに焦点を当てて説明します。
この記事を読むと
- 課題中心アプローチについて理解できる
- 課題中心アプローチの介入技法について理解できる
- 課題中心アプローチの実践事例と特徴について理解できる
課題中心アプローチってよく使うの?
使うよ!理論を意識しなくても無意識で使っていることが多いよ
課題中心アプローチとは何か
課題中心アプローチの定義
課題中心アプローチとは、クライエントが抱える具体的な問題や課題に焦点を当て、それらを解決するための具体的な行動目標を設定し、クライエントと協働しながら解決に導いていくアプローチです。従来の問題中心アプローチとは異なり、クライエントの強みや資源に着目し、クライエント自身が自分の力で課題を解決できるよう支援することが特徴です。
具体的には、まずクライエントと一緒に現在の問題や課題を明確にし、それらを解決するための具体的な行動目標を設定します。
そして、クライエントの強みや資源を活かしながら、クライエント自身が主体的に行動を起こし、目標達成に向けて取り組んでいくことが重要です。ソーシャルワーカーはクライエントの取り組みを支援し、必要に応じてアドバイスや情報提供を行います。
このように、課題中心アプローチは、クライエントの自己決定力と主体性を尊重しながら、具体的な課題解決に向けて協働して取り組むことが特徴です。短期的な介入で効果的な変化を促すことができるため、様々な分野のソーシャルワークで活用されています。
リードとエプスタイン
課題中心アプローチは、1970年代にウィリアム・リードとジャクリーン・エプスタインによって提唱された社会福祉の実践アプローチです。この手法は、クライエントが抱える具体的な問題に焦点を当て、短期間で目標を設定し、解決に向けて取り組むことを特徴としています。
リードとエプスタインは、従来の心理療法的なアプローチでは長期化しがちで、クライエントの生活課題に即座に取り組めないことに着目しました。
そこで、クライエントの現在の問題に焦点を当て、短期的な支援期間の中で具体的な目標を設定し、それに向けて協働して取り組むことを提唱したのが課題中心アプローチです。
課題中心アプローチの特徴
障害となるものを取り除く
クライエントの困りごとに対してその困りごとのもととなっている障害を明確にして取り除くことを考えます。例えば、サービスが不足している、現行の法制度が整ってないなどの外的なものからクライエントの能力やスキルの内的な者の両方を生涯と捉えます。
具体的な行動目標の設定
課題の明確化は、課題中心アプローチの第一歩です。クライエントが抱える問題や課題を正確に把握し、その解決に向けた方向性を見出すことが重要です。
まずは、クライエントとの対話を通して、現在の状況や問題点を詳細に把握します。
クライエントの言葉から、潜在的な課題を引き出し、その背景にある要因を探っていきます。そして、クライエントの望む理想の状態と現状との差異を明確にすることで、解決すべき課題を特定していきます。
目標は具体的で、達成可能なものでなければなりません。クライエントが自ら目標を設定することで、主体性と自己決定力が尊重されます。
短期的な介入
課題中心アプローチは短期的な介入を特徴としています。おそらく課題中心アプローチで最も中核となるのはこの短期的介入でしょう。
通常6か月から1年程度の期間で、クライエントが自ら行動を起こし、目標達成に向けて取り組むことができるよう支援します。長期的な支援ではなく、クライエントの変化を促すことが目的です。
以上のように、課題中心アプローチは、具体的な行動目標の設定と短期的な介入を特徴としています。ソーシャルワーカーはクライエントと協働しながら支援を行い、クライエントの主体性と自己決定力を尊重することが重要です。このアプローチは実用性が高く、様々な分野で活用されています。
クライエントとの協働
課題中心アプローチでは、クライエントとの協働が不可欠です。クライエントの自己決定力を尊重し、共に課題解決に取り組むことが重要です。
具体的には、クライエントの主体性を尊重しながら、一緒に課題を探っていきます。クライエントの強みや可能性に着目し、前向きな目標設定を行います。そして、クライエントの行動変容を支援するために、定期的な振り返りを行います。
また、クライエントの自己決定力を高めるために、選択肢を提示しながら支援します。さらに、クライエントの自立を目指し、段階的に支援の程度を減らしていきます。
このように、クライエントとの対等な関係性を築き、共に課題解決に取り組むことが課題中心アプローチの特徴です。クライエントの自己決定力を尊重しながら、支援者と協働して課題解決に取り組むことで、クライエントの自立と成長につなげていくことができます。
危機介入アプローチの支援展開と私の事例・具体例
課題中心アプローチの支援展開の実際
現在のジェネラリスト・ソーシャルワークの展開に非常によく似ています。課題中心アプローチがもとになっているといっても過言ではないでしょう。
始めにクライエントと障害となっているものを明確にして、解決のための契約を結びます。これは、ダラダラとした関係性になることを防ぐためで、クライエントと支援者という立場を明確にするためでもあります。
具体的な目標を設定して、クライエントが自ら解決できるように支援をしています。上述したようにそれは短期間で実施されることとなります。適宜、計画通りに問題解決に向けての達成状況を確認、評価を実施します。
予定どおり、障害が取り除かれていれば支援終了となります。
私の体験と実践事例
とてもベーシックな事例になると思います。
脳血管障害で入院していたクライエントの退院支援することになったケースです。クライエント本人はすぐに在宅に戻ることを希望していました。しかし、医師と理学療法士の見立てではまだまだADLが向上する見込みがあるとのことでした。
そういうことであれば、まずはリハビリ病棟へ転院することが一般的です。そのため、クライエントと面接し、リハビリ病棟転院の障害となっているものを明確にしていき、クライエント自身がリハビリの方に気持ちが向くように支援していきました。このケースの場合、障害となっているものは内的なものとして動機の弱さが挙げられます。
自己決定が大切なので、私から無理強いすることはありませんが、今回のように明らかにADL向上の見立てがある方は、なんとかリハビリ病棟へ転院してもらう方がいいと思います。
クライエント自身が解決の主体であることを理解するためにきちんと支援契約を結び私の役割、クライエントの役割をはっきりとさせました。
それほど難しいケースではなかったので、数回の面接で気持ちがリハビリに向かい、その後はスムーズにリハビリ病棟へ転院されていきました。
課題中心アプローチの適用上の注意点
自己決定を尊重しよう
課題中心アプローチを適用する際には、いくつかの注意点があります。まず重要なのは、クライエントの自己決定権を十分に尊重することです。支援者が一方的に課題を設定したり、解決方法を押し付けてはいけません。クライエントの意向を丁寧に聞き取り、共に課題を探っていく必要があります。
また、クライエントの強みや可能性に着目し、前向きな目標設定を行うことも大切です。単に問題を解決するだけでなく、クライエントの成長や自立につなげていくことが重要です。
そのためには、定期的な振り返りを行い、クライエントの変化を確認しながら、支援の方向性を調整していく必要があります。
このように、課題中心アプローチを適用する際は、クライエントの主体性を尊重し、共に課題解決に取り組むことが不可欠です。支援者と対等な関係性を築きながら、クライエントの自立と成長を目指していくことが重要です。
他のアプローチとの組み合わせ
課題中心アプローチは、他のアプローチと組み合わせて活用することで、より効果的な支援につなげることができます。例えば、認知行動療法のような行動変容アプローチと組み合わせることで、クライエントの具体的な行動変容を促すことができます。
また、ストレングス視点のアプローチと組み合わせることで、クライエントの強みや可能性に着目しながら、前向きな目標設定を行うことができます。さらに、ソーシャルスキル訓練(SST)のようなスキル獲得アプローチと組み合わせることで、クライエントが具体的な対処スキルを身につけられるようサポートできます。
このように、課題中心アプローチは他のアプローチと組み合わせることで、クライエントの課題解決をより効果的に支援することができます。支援者は、クライエントの状況に応じて、適切なアプローチを組み合わせて活用していくことが重要です。
課題中心アプローチをわかりやすくまとめると
課題中心アプローチは、クライエントの強みや資源に焦点を当て、彼らが自分の課題を解決できるよう支援する手法です。1970年代にアメリカのソーシャルワーカー、ウィリアム・リードとジャクリーン・エプスタインによって提唱されました。このアプローチでは、クライエントと協働して課題を明確にし、具体的な行動目標を設定し、短期間での目標達成を目指します。クライエントの自己決定力と主体性を尊重しながら、変化を促すことを目的としています。
まとめ
- クライエントと協働し、具体的な行動目標を設定することが重要。
- 短期的な介入を特徴とし、6か月から1年程度で目標達成を目指す。
- ソーシャルワーカーは、アドバイスや情報提供を通じてクライエントの取り組みを支援。
- ウィリアム・リードとジャクリーン・エプスタインによって1970年代に提唱された。
- クライエントの主体性と自己決定力を尊重し、共に課題解決に取り組む。
- 障害となる要因を明確にし、取り除くことを考える。
- 定期的な振り返りを通じて、クライエントの行動変容を支援。
- クライエントとの対等な関係性を築きながら、段階的に支援の程度を減らしていく。
- 課題中心アプローチは、ジェネラリスト・ソーシャルワークの展開に非常に似ており、具体的な目標設定と解決達成のための協働が核心