今回は、ソーシャルワークにおける面接技法・技術に焦点を当てて説明します。
この記事を読むと
- ソーシャルワークの面接技法について理解できる
- ソーシャルワークの面接の目的について理解できる
- ソーシャルワークの面接の意義について理解できる
傾聴が大事って聞くけど?
傾聴は大事だけど、面接はそれだけではないよ
ソーシャルワーク面接の重要性
ソーシャルワーク面接の目的
ソーシャルワーカーが行う面接には、主に3つの大きな目的があります。
まず1つ目は、援助関係の形成です。クライエントとソーシャルワーカーの信頼関係を築き、良好な関係性を作ることが重要です。クライエントが自分の思いを安心して話せる環境を整えることがこの目的の核心となります。
2つ目の目的は、情報収集です。クライエントの生活背景や抱えている問題、ニーズなどを詳しく把握することが目的です。クライエントの強みや課題を見出し、適切な支援につなげるために、この情報収集が不可欠なのです。
そして3つ目の目的は、課題解決です。クライエントの抱える問題を一緒に明確化し、解決に向けた方策を立てることが目的となります。クライエントの主体性を尊重しながら、ソーシャルワーカーが専門的な視点から支援していくのがこの目的です。
これら3つの目的を念頭に置きながら、ソーシャルワーカーは面接を行います。クライエントとの良好な関係性を築き、クライエントの状況を丁寧に理解し、課題解決に向けて一緒に取り組むことが重要なのです。
ソーシャルワーク面接の意義
ソーシャルワークの面接の意義で大切なことは面接そのものが援助になるということです。
ソーシャルワーカーは面接で意図的なかかわりをします。どんな質問にも必ず意味を持たせます。
例えば、「今日は暑いですね」という言葉にはリラックスして話すことができる導入の言葉だったり、
「私もなんですよ」という言葉には親和性を持たせる効果が考えられます。
日常会話と面接の差はここにあります。日常会話ではどのような会話でも構いませんし、狙った効果もありません。
相手を気遣いながら話すというは最低限のルールでしょうが、個人的見解を伝えて問題ないでしょう。
翻ってソーシャルワーク面接では個人的見解を伝えるのは稀です。必ず専門的知見から伝えることになります。
このように意図的なかかわりをとおして、クライエントの問題解決を図っていくことに面接の意義があります。
ソーシャルワーク面接技術と技法
言い換え
言い換えとは、クライエントが話した内容を、ソーシャルワーカー自身の言葉で言い換えてクライエントに伝える技法です。クライエントの話を要約したり、別の表現で伝えることで、ソーシャルワーカーがクライエントの意図を正しく理解できたかを確認することができます。
また、言い換えはクライエントの話を整理したり、焦点化したりする効果もあります。クライエントの話が複雑だったり、言葉が明確でなかったりする場合に、ソーシャルワーカーが言い換えることで、クライエントの訴えをより明確にすることができるのです。
さらに、言い換えはクライエントとの信頼関係を深めるためにも重要な技術です。クライエントの話を丁寧に聞き取り、言い換えて返すことで、クライエントは自分の思いが理解されていると感じ、ソーシャルワーカーに対する信頼感を高めることができます。
ただし、言い換えを行う際は、クライエントの言葉を正確に捉えることが不可欠です。クライエントの意図を損なわないよう、慎重に行う必要があります。また、言い換えの仕方によっては、かえってクライエントを混乱させてしまう可能性もあるため、適切な言葉選びが重要です。
感情の反映
感情の反映とは、クライエントが表出している感情を、ソーシャルワーカー自身の言葉で表現し返すことです。クライエントが話している内容から、その背景にある感情を察し、それを言語化して伝えるのです。
この技術を活用することで、ソーシャルワーカーはクライエントの内面に深く寄り添うことができます。クライエントが自分の感情を理解されていると感じることで、ソーシャルワーカーとの信頼関係が深まり、より効果的な支援につながります。
また、感情の反映は、クライエントの自己理解を促す効果もあります。
自分の感情が言語化されることで、クライエントは自分の内面をより明確に認識できるようになります。そうすることで、クライエント自身が自分の問題を深く理解し、解決に向けて主体的に取り組むことができるようになるのです。
沈黙の活用
ソーシャルワークの面接では、沈黙を適切に活用することが重要です。沈黙は、クライエントの内面を探る非言語的なコミュニケーションとして機能します。
沈黙には様々な意味合いがあります。クライエントが自分の気持ちを整理している時間、ソーシャルワーカーの問いかけに対して考えを巡らせている時間、あるいは、クライエントが話すことを躊躇している時間など、沈黙にはそれぞれ意味があるのです。
ソーシャルワーカーは、このような沈黙の意味を適切に理解し、それに応じて対応する必要があります。例えば、クライエントが自分の気持ちを整理している時は、焦らずに待つことが大切です。一方で、クライエントが話すことを躊躇している時は、沈黙を破って適切な質問をすることで、クライエントの内面に迫ることができます。
このように、ソーシャルワーカーには沈黙の意味を的確に捉え、状況に応じて適切に対応する能力が求められます。沈黙を上手く活用することで、ソーシャルワーカーはクライエントの内面に深く迫ることができ、より効果的な支援につなげることができるのです。
また、沈黙の活用は、クライエントとの信頼関係を深める上でも重要な役割を果たします。クライエントが自分の気持ちを十分に吐露できる時間を設けることで、ソーシャルワーカーがクライエントの内面に寄り添っていると感じてもらえるのです。
沈黙の活用 体験談・実践事例
「夫の介護をされてきて最も大変と感じることはどんな場面でしたか?」と質問したとします。
きっと妻の脳裏には様々な大変なことが思い浮かんでは消えて、とても一言では言い表すことができないことでしょう。
このときにソーシャルワーカーが焦って矢継ぎ早に「これですか?」「あれはどうですか?」と聞いてしまうと、妻が心の中で整理をしている状況を邪魔することになってしまいます。そのため、心の整理を邪魔しないように沈黙を活用して暫く待つようにします。この沈黙は実践してみると想像以上に長く感じます。
私も若いときは苦手で何度も話しかけてしまい、失敗しました。
クライエントの整理の時間をじっくりと待つようにしましょう。
そうはいってもいつまでも待つことも正解ではありません。あまりに時間がかかりすぎている場合は、ソーシャルワーカーから声をかけてみましょう。
じゃあ、どのくらい待つのが正解なんだ!?と思われるでしょう。
残念ながらこれは目のまえのケースごとによって異なるので一概には言えません。少なくとも10秒以上は待ってみましょう。
オープンクエスチョン(開かれた質問)
オープンクエスチョンとは、はい/いいえで答えられない質問のことで、クライエントに自由に話してもらえる質問形式です。
オープンクエスチョンを使うことで、クライエントの内面や生活状況、考えなどを深く掘り下げることができます。例えば、「今の気持ちを教えてください」「どのようなことが困っていますか」といった質問は、クライエントに自由に話してもらえる良い例です。
ソーシャルワーカーには、オープンクエスチョンを適切に使い分ける能力が求められます。
オープンクエスチョン(開かれた質問) 体験談・実践事例
リハビリテーションができる病院への転院先を検討中の面接場面と設定します。
「リハビリテーションができるということは大切にしますが、それ以外に病院に求めることはどのようなことでしょうか」というような質問です。
このような聞き方をすると、施設のきれいさ、お見舞いにいくのにかかる時間、費用などクライエントが大切にしたいことを聞くことができます。
クローズドクエスチョン(閉ざされた質問)
クローズドクエスチョンとは、はい/いいえで答えられる質問のことです。
一方、クローズドクエスチョンには限界もあります。クライエントの内面や考えを深く引き出すことは難しく、表面的な情報しか得られない可能性があります。
ソーシャルワーカーには、状況に応じて適切な質問形式を使い分ける能力が求められます。クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンの使い分けは、ソーシャルワークの面接において非常に重要な技術なのです。
このように、クローズドクエスチョンの活用は、ソーシャルワークの面接において欠かせない技術の1つです。ソーシャルワーカーは、状況に応じて適切な質問形式を使い分けることで、クライエントの理解を深め、より効果的な支援につなげることができるのです。
クローズドクエスチョン(閉ざされた質問) 体験談・実践事例
上記と同じシチュエーションだとします。
「お見舞いに行くのに1時間以上かかっても大丈夫でしょうか?」
「料金は20万円以上でも大丈夫でしょうか?」
など、具体的な質問になります。
これでは尋問みたいになってしまうのと、一つひとつの質問が細かすぎて必要な情報にたどり着くのに時間がかかりすぎてしまいます。実際の面接では、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを組み合わせて使います。
まずは、オープンクエスチョンを使い、細かいところはクローズドクエスチョンで詳細をつめていくイメージです。どちらが優れた技法ということはないので、必要に応じて使い分けていきましょう。
ソーシャルワーク面接の構造化
面接時間と頻度
面接時間は面接内容によって時間が変わりますが、長すぎてはいけません。というのも人間は長く話せば疲れてくるし、聞き手であるソーシャルワーカーも疲弊し、要点をまとめることができなくなる可能性があります。
そのため、受容・共感は大切にしながらも、コンパクトにまとめる技術が重要です。
もう一つ重要なのは面接時間をあらかじめ決めることです。初めから時間を決めておくことでクライエントとソーシャルワーカーともに時間を意識することができます。
ただし、2回目、3回目の面接で、ケースがうまくいっていれば、初回面接に比べて面接時間が短くなります。そのたびに時間をあらかじめ伝えると、くどい印象を与えかねないので、そのあたりは臨機応変に対応すれば問題ありません。
面接する場所・空間
面接する場所は、フォーマルな面接室、生活空間における面接があります。初回面接は、フォーマルな面接室で面接することになります。
クライエントと生活空間で行う面接は生活場面面接と呼ばれます。生活場面面接のメリットはクライエントがリラックスしやすいという点です。
皆さんも、かしこまったレストランより、ファミリーレストランの方がリラックスして食事できるといったことに心当たりはありませんか?
これと一緒で、クライエントも面接室という場を設けられるより、普段の居室や家の方がリラックスできるというものです。そうすると、面接場面では聞けなかったような深い話をしてくださることも多々あります。
また、クライエントとばったりお会いしたとき、挨拶で終わらなければ、それも生活場面面接と呼べるでしょう。何気ない会話のなかからアセスメントできることもあります。
アセスメントについてはこちら
ソーシャルワークにおける面接技術・技法をわかりやすくまとめると
ソーシャルワーカーが行う面接には、主に3つの大きな目的があります。まず1つ目は、援助関係の形成であり、クライエントとの信頼関係を築き、良好な関係性を作ることが重要です。2つ目は、情報収集であり、クライエントの生活背景や抱える問題を詳しく把握し、適切な支援につなげるための情報収集が不可欠です。そして3つ目は、課題解決であり、クライエントの抱える問題を明確化し、解決に向けた方策を立てることが目的です。また、面接技術として、言い換え、感情の反映、沈黙の活用、オープンクエスチョン、クローズドクエスチョンがあります。これらの技法を適切に用いることで、クライエントとの効果的なかかわりを築くことができます。
まとめ
- ソーシャルワーカーの面接の大きな目的は、援助関係の形成、情報収集、そして課題解決です。
- ソーシャルワーカーは面接で意図的なかかわりをし、質問に意味を持たせます。
- 言い換えはクライエントの話を要約したり、別の表現で伝えることで、クライエントの意図を理解しやすくします。
- 感情の反映は、クライエントの感情を察し、それを言語化して伝えることで信頼関係を深めます。
- 沈黙の活用は、クライエントの内面を探る非言語的なコミュニケーションとして重要です。
- オープンクエスチョンはクライエントに自由に話してもらえる質問形式で、内面や生活状況を掘り下げることができます。
- クローズドクエスチョンははい/いいえで答えられる質問であり、深い情報を得るのには限界があります。