今回は、ソーシャルワーカー(社会福祉士)の仕事「地域包括支援センター」に焦点を当てて説明します。
この記事を読むと
- 地域包括支援センターの役割(特に社会福祉士)について理解できる
- 地域包括支援センターの仕事内容について理解できる
- 地域包括支援センターの対象者について理解できる
何でも相談にのってくれるらしいけど、何でもって言いすぎじゃない?
いや、本当だよ。困ったら地域包括支援センターへGO!
地域包括支援センターとはどういうところ?4つの役割から考える
総合相談・支援事業
文字通り何でも相談できる事業を実施しています。
「何でも」って何となるのでもう少し説明しますね。
地域包括支援センターは、高齢者の健康や生活全般、介護に関する相談を受け付ける総合相談窓口です。
例えば、
- 認知症の症状への対応
- 介護サービスの利用方法
- 日常生活での困りごと
- 経済的な心配事
など、高齢者を取り巻く様々な課題について幅広く相談を受け付けています。
そして、受け付けた相談内容に応じて、適切な支援策を検討し、関係機関と連携しながら解決に導いていきます。
相談内容によっては、高齢者の自宅を訪問して、より詳細な状況把握を行うこともあります。
これにより、高齢者の生活実態に即した支援を検討することができます。
とにかく幅広く高齢者のことなら何でも相談に乗ってくれます。対応できない場合は対応できる機関を紹介してくれます。
介護予防ケアマネジメント
介護予防ケアマネジメントは、高齢者の自立支援を目的とした取り組みで、要支援1または要支援2の認定を受けた人が対象です。そのほかにも、地域包括支援センターが必要と判断した場合は、介護予防ケアマネジメントの対象となります。例えば、虚弱な高齢者や、今後の生活に不安がある高齢者などが含まれます。
介護予防ケアマネジメントでは、高齢者の心身の状況を総合的に評価します。日常生活動作の状況、認知機能、栄養状態、口腔機能など、様々な側面から高齢者の状態を把握します。そして、その結果に基づいて、高齢者に必要な支援を検討していきます。
次に、高齢者本人の意向を丁寧に聞き取り、自立支援に向けた目標を一緒に設定します。
例えば、外出の機会を増やしたい、趣味の活動を続けたいなど、高齢者自身が望む生活の実現に向けて、具体的な支援計画を立てていきます。
高齢者にとって歩けるようになることはとても大切ですが、それがゴールではありません。
歩けるようになって何をしたいのかを考えることがゴールになります。
例えば、孫と一緒に遊びたい、着物を着て散歩をしたいなど人によって様々でしょう。大切なことはその人が望む生活を理解して実現に近づけることです。
要介護状態にならない…だけではダメ!目標はどんな生活をしたいのかということに注目!
権利擁護事業
この事業では、判断能力が不十分な高齢者の方々の権利を擁護するための支援を行っています。
地域包括支援センターの権利擁護事業は、高齢者の権利を守り、尊厳ある生活を送れるよう支援することを目的としています。
具体的には、判断能力が不十分な高齢者に対して、成年後見制度の活用を提案したり、日常生活自立支援事業につなげるなど、適切なサービスを見つけるお手伝いをしています。
成年後見制度を知っている方は
「地域包括支援センターの権利擁護事業と成年後見制度はどう違うの?」
と疑問に思われるかもしれません。
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人の権利を守るための制度です。
成年後見人は、本人の財産管理や身上保護などの法的な手続きを行い、悪質な契約被害から守ります。この制度を利用することで、本人が安心して生活できるようサポートされるのです。
つまり、地域包括支援センターの権利擁護事業は、高齢者の権利を守るための幅広い支援を行っているのに対し、成年後見制度は、判断能力が不十分な人の権利を守るための法的な手続きを中心とした支援を行っているといえます。両者は高齢者の権利擁護に向けて、それぞれの役割を果たしているのです。
地域包括支援センターの権利擁護事業は浅く広くのイメージ!
包括的・継続的ケアマネジメント支援
高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、ケアマネージャー、主治医、地域の関係機関などが連携して支援する取り組みです。
具体的には、ケアマネージャーが中心となって、主治医や地域の様々な専門職と連携しながら、高齢者の生活課題を把握し、必要なサービスを調整・提供します。また、高齢者の状況に変化があった場合には、迅速に対応できるよう、関係者間の情報共有や連絡調整も行います。
さらに、地域包括支援センターは、ケアマネジャーの支援体制を整備したり、地域の関係機関とのネットワークづくりにも取り組みます。
うーん、これでもまだわかりにくいですね…。
例えば、
- 民生委員さんと仲良くなる
- 自治会と仲良くなる
- 地域の病院と日ごろから連絡をとる
- 地域包括支援センターの職員同士で連絡を取り合い、仕事をしやすくする
などが挙げられます。
つまり、この取り組みは、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう、多職種が連携して支援するものだと言えます。高齢者一人ひとりの状況に合わせた最適なケアを提供することで、地域包括ケアシステムの実現につなげていくのが目的です。
地域によって取り組みが異なるため、少しわかりにくいかもしれません。
地域包括支援センターの仕事内容をわかりやすく解説!
地域包括支援センターの対象者(利用者の特徴)
地域の方全員が対象です!ってことだとわかりにくいですよね。
本当なんですけど。
- 65歳以上
- 40歳から64歳の第2号被保険者
- 要支援認定を受けた人
- 要支援認定を受けてなくても地域包括支援センターが必要だと認めた人
- 家族
- 地域住民
ね、やっぱり全員ですよね。
地域包括支援センターは、高齢者本人だけでなく、ご家族や介護サービス事業者、医療機関などの関係者も支援の対象としています。
高齢者の生活を支えるためには、本人はもちろん、家族や専門職との連携が不可欠だからです。
例えば、認知症などで判断能力が低下した高齢者の場合、ご家族が代わりに相談や手続きを行うことが必要かもしれません。
また、医療機関や介護サービス事業者からの情報提供や連絡調整も、地域包括支援センターの重要な役割となっています。
つまり、地域包括支援センターは、高齢者本人はもちろん、高齢者を支える周囲の人々も含めた、地域全体を対象としているのが特徴だと言えます。
3職種の役割と連携
地域包括支援センターには、主に3つの職種が配置されています。
- ケアマネジャー
- 保健師
- 社会福祉士
ケアマネジャーは、高齢者一人ひとりの状況を把握し、必要なサービスを調整・提供します。介護保険サービスの利用計画を立てたり、医療・福祉の連携を図ったりと、高齢者の生活を包括的にマネジメントしています。
保健師は、高齢者の健康管理や介護予防に取り組みます。健康診断の実施や、運動教室の開催など、高齢者の健康維持と自立支援に尽力しています。また、地域の健康課題の把握や、関係機関との連携にも力を入れています。
社会福祉士は、高齢者の生活全般をサポートします。日常生活の相談や、福祉サービスの利用支援、権利擁護など、高齢者の生活を幅広くサポートしています。また、地域のネットワークづくりにも貢献しています。
これら3職種が互いに連携し、高齢者一人ひとりのニーズに合わせて適切なサービスを提供することで、地域包括ケアシステムの実現を目指しています。
社会福祉士の役割
地域包括支援センターでは「何でも誰でも」相談できる機関であるということは説明しました。
また、3職種で連携しながら支援することもお伝えしたとおりです。
では、社会福祉士の役割はなんでしょうか?
答えは「最も広く浅く隙間からこぼれ落ちないように」です。
???よくわからないと思われたかもしれません。もう少し詳しくお伝えします。
例えば、保健師は健康管理、ケアマネジャーは、ケアプラン作成などの業務があります。
では、社会福祉士は?
そうです!「その他諸々」です。
そもそも社会福祉士は幅広い範囲の生活問題に対応することが専門性です。そのため必然的に何でも幅広く相談にのることこそが専門性となります。
介護保険の利用や権利擁護、虐待への対応など、高齢者が直面する課題に丁寧に寄り添い、適切なサービスにつなげていきます。
もう少し具体的は、経済面や家族関係など、社会的背景が複雑な高齢者への支援が多いのが特徴です。そうした高齢者の生活課題を総合的に捉え、医療や福祉の専門職と連携しながら、きめ細かなサポートを行っています。
また、虐待の通報があった場合は、迅速に初期対応を行います。保健師などの医療職と協力し、高齢者の安全を確保するための対応を取ります。
幅広い相談は、保健師もケアマネジャーも行っています。しいて言えば社会福祉士の割合が多いと思ってください!
地域包括支援センターと病院との連携
連携した体験談 地域包括支援センター×病院
病院で務めていると、とにかく地域包括支援センターと連携することが多い、多い!
「何でも相談できる窓口」なので「何でも相談」していました。
担当のケアマネがいないときは、まず地域包括支援センターです。
転院するほどではなく、退院なんだけど少しだけ支援の手が欲しいというときは真っ先に連絡していました。正式に介護保険を使うほどではないけど、見守りなしというのも不安ということって結構あるんですよね。
そういう時に、ケースの相談をして「見守りしてもらえませんか?」とお願いするとすぐに「いいですよ!X日退院ですね。では、まず当日と次の日に訪問してみます!」というお返事をもらいました。
こういうのってとっても助かるんですよね。
私が勤めていた地域の地域包括支援センター職員の皆さんはとても感じがいい方ばかりでどんな相談でも丁寧に乗ってくれました。
というか、地域包括支援センターに連絡して嫌思いをしたことはない気がします。
地域包括支援センターは楽しい!けど辞めたい!?友人の体験談
地域包括支援センターに勤めている友人に仕事の内容を聞くと、真っ二つに分かれる意見が多かったです。
まず、地域包括支援センターがすごく好きな人の意見
- 支援の範囲が広いから自分(SW)で決める範囲が多く、充実した支援ができる。
- 支援の時間的制約が少ないからじっくりとクライエントと向き合うことができる。
- 地域の方と関わることが多いので色々な人と仲良くなり、とても楽しい。
- 地域のお祭りの参加が最高。
辞めようかなと思っている人の意見
- 支援の幅が広く、何が自分の仕事かわからない。
- お祭りとかは苦手。
- 外にでかけるので体力的にキツイ。
いかがでしょうか?
比較すると「向き不向き」の問題のように思えます。ちなみに私はお祭りとか苦手なので、自分が地域包括支援センターに勤めるかと言われると、「いや」という答えになります。
地域包括支援センターの設置主体・財源・人員基準
苦情窓口
苦情窓口は非常に重要な役割を果たしています。
地域包括支援センターでは、高齢者やその家族から様々な苦情や相談を受け付けています。これには、施設や事業所に対する苦情も含まれます。
自浄作用が働いている施設なら問題ないですけど、いくら言っても改善せず…なんてこともありますからね。
センターでは、これらの苦情について迅速に調査を行い、状況に応じて適切な助言や指導を行います。
また、地域包括支援センターは、高齢者の虐待防止にも力を入れています。近所の人などから虐待の情報を受け付け、早期発見と早期対応に努めています。虐待が疑われる場合は、関係機関と連携して適切な対応を取ります。
さらに、地域包括支援センターは、高齢者の生活課題に対して、医療、福祉、介護の各分野の専門家が連携して支援を行う窓口でもあります。
利用者の方々が安心して相談できる場所として、重要な役割を果たしているのです。
設置主体
市町村です。
もしくは市町村から委託を受けた社会福祉法人、医療法人なども設置できます。
財源
地域支援事業交付金
地域包括支援センターの包括的支援事業に要する経費は、国が市町村に交付する「地域支援事業交付金」から拠出されます。この交付金は介護保険制度の一環として位置づけられています。
介護保険料
地域包括支援センターの介護予防支援業務(予防給付のケアマネジメント)に要する経費は、介護保険料から賄われます。
市町村の一般財源
上記の交付金や保険料以外の運営経費は、市町村の一般財源から拠出されます。
財源の割合
地域支援事業交付金と介護保険料の財源充当割合は、調整後の割合で運用されています。
地域によって財源の割合が異なる場合もあります。
国の交付金、介護保険料、市町村の一般財源から複合的に賄われている
人員基準
地域包括支援センターには、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種が必ず配置されています。これは、高齢者の生活課題に対して、医療、福祉、介護の各分野の専門家が連携して支援を行うためです。
具体的な人員基準は、65歳以上の高齢者が3,000人~6,000人いる地域に対して、各職種1名以上の配置が必須とされています。
ただし、人口の少ない小規模な市町村の場合は、例外措置として、3職種のうち2職種の配置でも認められています。
地域包括支援センターの社会福祉士の役割と仕事をわかりやすくまとめると
地域包括支援センターでは、高齢者や介護に関する相談を受け付け、認知症や介護サービス、日常生活での悩みなどに幅広く対応しています。また、介護予防ケアマネジメントでは、高齢者の自立支援を行い、権利擁護事業では判断能力が不十分な高齢者の権利を守ります。
さらに、包括的・継続的ケアマネジメント支援では、様々な専門職が連携して高齢者の生活課題を把握し、最適なケアを提供しています。これらの取り組みは、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう支援し、地域包括ケアシステムの実現を目指しています。
高齢者やその家族、地域住民を対象とし、ケアマネジャー、保健師、社会福祉士の3つの職種が連携して支援を行います。社会福祉士は幅広い相談に対応し、介護保険の利用や権利擁護などを担当します。センターの設置主体は市町村で、財源は地域支援事業交付金や介護保険料などから賄われます。
まとめ
- 地域包括支援センターは、高齢者の健康や生活全般、介護に関する相談を受け付ける総合相談窓口であり、認知症の症状への対応や介護サービスの利用方法、日常生活での困りごと、経済的な心配事など高齢者を取り巻く様々な課題に幅広く相談を受け付けている。
- 介護予防ケアマネジメントは、要支援1または要支援2の認定を受けた高齢者や地域包括支援センターが必要と判断した高齢者を対象としている。
- 権利擁護事業では、判断能力が不十分な高齢者の権利を擁護するための支援を行う。
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援は、ケアマネージャー、主治医、関係機関などが連携して、高齢者の生活課題を把握し、必要なサービスを調整・提供し、地域で自立した生活を送れるよう支援する。
- 地域包括支援センターの対象者は、65歳以上、40歳から64歳の第2号被保険者、要支援認定を受けた人、要支援認定を受けてなくても地域包括支援センターが必要だと認めた人、家族、地域住民を対象である。
- 地域包括支援センターには、ケアマネジャー、保健師、社会福祉士の3つの職種が配置されている。
- 社会福祉士の役割は、幅広い範囲の生活問題に対応し、介護保険の利用や権利擁護、虐待への対応など高齢者が直面する課題に寄り添い、適切なサービスにつなげることである。
- 地域包括支援センターの設置主体は市町村であり、財源は地域支援事業交付金、介護保険料、市町村の一般財源から拠出される。